「黒猫を飼い始めた。」という一文から始まる26編のショートショート集。
26人の異なる作家が『黒猫』という共通の要素を持たせた、それぞれのストーリーを展開。
この本のおもしろかった点は、同じ書き出し「黒猫を飼い始めた。」から始まるにもかかわらず、26通りの異なる物語が展開されていることです。
各作家の個性が鮮明に表れ、ミステリーやサスペンス要素が多く、予測不可能な展開に魅了されました。
「黒猫を飼い始めた」作品紹介
- 「妻の黒猫」 潮谷 験
- 「灰中さんは黙っていてくれる」 紙城境介
- 「イメチェン」 結城真一郎
- 「Buried with my CAAAAAT.」 斜線堂有紀
- 「天使と悪魔のチマ」 辻 真先
- 「レモンの目」 一穂ミチ
- 「メールが届いたとき私は」 宮西真冬
- 「メイにまっしぐら」 柾木政宗
- 「ミミのお食事」 真下みこと
- 「神の両側で猫を飼う」 似鳥 鶏
- 「黒猫の暗号」 周木 律
- 「スフィンクスの謎かけ」 犬飼ねこそぎ
- 「飽くまで」 青崎有吾
- 「猫飼人」 小野寺史宜
- 「晦日の月猫」 高田崇史
- 「ヒトに関するいくつかの考察」 紺野天龍
- 「そして黒猫を見つけた」 杉山 幌
- 「ササミ」 原田ひ香
- 「キーワードは黒猫」 森川智喜
- 「冷たい牢獄より」 河村拓哉
- 「アリサ先輩」 秋竹サラダ
- 「登美子の足音」 矢部 嵩
- 「会社に行きたくない田中さん」 朱野帰子
- 「ゲラが来た」 方丈貴恵
- 「独り暮らしの母」 三津田信三
- 「黒猫はなにを見たか」 円居 挽
「黒猫を飼い始めた」の感想
ひとつひとつのお話が思っていた以上に短く、それでいて、それぞれ色んな趣向が凝らされており、あっという間に読み切りました。
『黒猫』というシンボルからか、ミステリやサスペンス系が多い印象。
表紙からは想像できない背筋がゾクッとする話も…
やっぱり『黒猫』というワードがそうさせているのか、不思議なアンソロジーでした。
普段読まないかなぁという作家さんとも出会えて、そういった意味ではアンソロジーも良いのかも。
豆知識的な、猫に与えてはいけない食べ物についても一部の話で触れられ、猫との関係についても考えさせられました。
「黒猫を飼い始めた」面白かった話
面白かった話とその作家・題名は以下の通りです。
「イメチェン」 - 作家: 結城真一郎
同棲カップルの普通の生活から始まり、予想外の展開に驚かせます。
結城真一郎さんのおすすめ小説「名もなき星の哀歌」
記憶を売ったり買ったりする事務所にスカウトされる若い二人。大学を留年して卒業後、銀行員と漫画家志望。目標売上3000万円。銀行にくる客からターゲットを見つける。これをネタに探偵をする計画をたてる。人の記憶をデータとして出し入れ持ち運び削除上書きができる世界でのミステリ。
「メールが届いたとき私は」 - 作家: 宮西真冬
仲の良い男友達からのメールが、読者に共感を呼び起こす展開が魅力
宮西真冬さんのおすすめ小説「彼女の背中を押したのは」
「妹がビルから飛び降りた」という一報を受ける姉。ここから物語は始まる。その日に妹から「相談したいことがある」とメールを受けていた姉だったが、そっけない返事で対応してしまう。
そのことを後悔しながらも、妹の身に何があったのか、妹を追い詰めたものは何だったのか。
「メイにまっしぐら」 - 作家: 柾木政宗
文章の巧妙な書き方が勘違いを引き起こし、笑いを誘うポイントです。
柾木政宗さんのおすすめ小説「まだ出会っていないあなたへ」
1.経験者採用面接での不合格者が自殺をしてしまった人事課長。
2.デビューしたものの2作目が出ずブラック企業で働く小説家。
3.SNSで「死にたい」と呟き続けるコンビニ店員。
4.取り立て先の子どもに好かれてしまったヤクザ者。行き詰まり、立ち止まる主人公たちが選ぶ未来はどこへ繋がるかーー。
「神の両側で猫を飼う」 - 作家: 似鳥鶏
予想外の異世界設定で幸福な結末に導く、ユニークなストーリー展開
似鳥鶏さんのおすすめ小説「そこにいるのに 13の恐怖の物語」
どの話も思わず青ざめる13の短編ホラー。怖い、でも止められない。撮ってはいけない写真、曲がってはいけないY字路、帰ってはいけない部屋、見てはいけないURL、剥がしてはいけないシール、探してはいけない場所、思い出してはいけないモノ…。
「そして黒猫を見つけた」 - 作家: 杉山幌
大学生が黒猫を拾うという普通の状況から始まり、結末が読者にすっきり感を与える要素があります。
「黒猫を飼い始めた」感想レビューのまとめ
この本を読み終えて、短編集ながら26人の作家による多彩なアプローチと、『黒猫』という共通テーマが物語の奥深さを引き立てたと感じました。
また、新しい作家に挑戦する機会を提供してくれるアンソロジーの良さも分かりました。
作家の方が、他の作品と内容が被らないように書くのも大変だっただろうなぁ。
よくここまで異なるストーリーがそろったなと。
おすすめのアンソロジーです♪
コメント