PR

『月ぬ走いや、馬ぬ走い』(豊永浩平・著)レビュー|痛みは希望に変わるのか?

小説・文学

当サイトではアフィリエイトプログラムを利用して商品を紹介しています。

確か日経の読書欄で知って、気になって手に取った一冊でした。沖縄を扱った小説だとわかってはいたのですが、読み始めてすぐ「これは軽い気持ちでは読めない本だ」と感じました。 時代も人物も切り替わりながら、沖縄の抱えてきたものが、一本の太い線として浮かび上がっていく。その構成に戸惑いながらも、ページを行ったり来たりしてしまうほど引き込まれました。 そして何より、作者が21歳(2003年生まれ)と知ったとき、文章の成熟度と視点の広さに驚愕しました。

【書誌情報】

タイトル月ぬ走いや、馬ぬ走い
著者豊永浩平【著】
出版社講談社
発売日2024/07
ジャンル文芸(一般文芸)
ISBN9784065363720
価格¥1,562
出版社の内容紹介

第67回群像新人文学賞受賞!新たな戦争の時代に現れた圧倒的才能!21歳の現役大学生、衝撃のデビュー作。先祖の魂が還ってくる盆の中日、幼い少年と少女の前に、78年前に死んだ日本兵の亡霊が現れる――。時空を超えて紡がれる圧巻の「語り」が、歴史と現在を接続する!島尾敏雄ほか先人のエコーを随所に響かせながら、沖縄に深く堆積したコトバの地層を掘り返し、数世代にわたる性と暴力の営みを、『フィネガンズ・ウェイク』的な猥雑さで、書きつけた作品。Z世代のパワフルな語部の登場を歓迎する。―― 島田雅彦十四章の構成で沖縄の近現代史を描き切る、しかも連関と連鎖、いわば「ご先祖大集合、ただし無縁者も多い」的な賑わいとともに描き切る、という意図はものになった、と私には感じられた。/この小説はほぼ全篇、ある意味では作者自身のものではない言葉で綴られていて、だからこそ憑依的な文体を自走させている。つまり、欠点は「長所」なのだ、と私は強弁しうる。要するにこの「月ぬ走いや、馬ぬ走い」は小さな巨篇なのだ。―― 古川日出男「読んだものを茫然とさせ、彼のいままでを氷づけにし、そのうえで、読むことをとおしてあたらしい魂を宿らせる、そんな小説でありたい……テクストでの魂込め(まぶいぐみ)とでも呼ぶべきところが、ぼくの目標です。」豊永浩平(受賞のことば)ぼくがここにいて、そしてここはどんな場所で、なによりここでぼくはこうして生きてきた、ってことを歌って欲しいんだ、ほとばしるバースはライク・ア・黄金言葉(くがにくとぅば)、おれらは敗者なんかじゃねえぞ刻まれてんのさこの胸に命こそ宝(ぬちどぅたから)のことばが、月ぬ走いや、馬ぬ走いさ!

────────────────────────────

本の概要(事実の説明)

本書は沖縄の戦世から現在までを、複数の語り手によって描く小説です。終戦間際、領土決戦、米国統治、復帰後の基地問題、平成から令和へと、時代が次々に移り変わります。 日本兵、島民、若者、霊魂など立場の異なる人物が語ることで、沖縄の歴史が「過去の出来事」ではなく、今に繋がるものとして迫ってきます。 作品全体を通して漂うのは暴力の気配、痛み、閉塞感です。けれど、それだけに終わらず、未来への希望や安心感へと読後感が変化していくという声もありました。 沖縄の歴史に触れたい人だけでなく、言葉と構成で「歴史の連続性」を体感したい人にも向く小説だと感じます。

印象に残った部分・面白かった点

まず圧倒されたのは、言葉の密度でした。改行が少なく、一冊全体が波のようにうねる感覚があり、読んでいるうちに読者ごと飲み込む力があると感じました。うちなーぐちが効果的に用いられていて、それが装飾ではなく、痛みや温度を伝えるための「息づかい」として存在しているのが印象的でした。 また、全く違う時代・人物の物語が、同じセンテンスの中で唐突に切り替わる手法には驚かされます。最初はとっちらかっているように見えるのに、中盤以降、急に繋がりが見えてきて一気に読ませる力がある。まさに「どこで登場人物が繋がるんだろう」と考えながら追いかける楽しみがありました。 終戦間際からの沖縄の歴史を扱う以上、目を逸らしたくなる描写も出てきます。けれど、「逸らしてはいけない」という作者の意思が、海やガマの中から聞こえてくるようだった、という感想には深く頷きました。

本をどう解釈したか

この作品が投げかけている問いは、「沖縄の歴史はどこで終わり、どこから始まるのか」というもののように感じました。 過去と現在の境界が曖昧になり、霊魂が語ることで時間が折り重なっていく。フラッシュバックは個人の記憶というより、土地やDNAに刻まれた記憶として立ち上がってきます。 「月ぬ走いや、馬ぬ走い」という言葉が示すのは、時間があまりにも早く過ぎ去ってしまうことへの諦観のようでもあり、だからこそ時を大事にしろという祈りのようでもあります。苦悩はなくなるのか、という疑問が残る一方で、苦悩を抱えたまま生きていく術を模索する言葉にも見えました。

読後に考えたこと・自分への影響

読み終えて感じたのは、「沖縄は複雑だ」という簡単な言葉では到底収まらない、ということでした。複雑で、痛くて、そして現在に続いている。 一人ひとりが糸となり、気づくと大きな織物を織っている。そんな感想がありましたが、私も同じように思います。登場人物たちの語りは単独では散らばっているのに、最終的には「連綿と続く沖縄」という巨大な織物になっていく。 作者がまだ若いからこそ、歴史の呪いを受け継ぎながら生きる現代の若者たちの視点が、作品を未来に繋げる役割を果たしているように感じました。

この本が合う人・おすすめの読書シーン

これは「片手間に読む」タイプの小説ではないと思いました。できれば夜、静かな部屋で、ページを行ったり来たりできる余裕のある時間に読みたいです。 休日の午後に腰を据えて読むのも良いのですが、物語の痛みや言葉の渦に飲まれやすいので、読み終えた後もしばらく余白を取れるタイミングが合うように感じました。読み終えたあとに、静かに呼吸を整える時間まで含めて、この本の読書体験なのだと思います。

『月ぬ走いや、馬ぬ走い』(豊永浩平・著)レビューまとめ

読みやすさを優先した小説ではありません。けれど、それ以上に、言葉が持つ力と、歴史が連続しているという感覚を強く残してくれる一冊でした。

馬さながらに年月は駆け抜けていく。その速さに置き去りにされないように、私はしばらくこの本の言葉を抱えていたいと思いました。

読後の余韻を深めるための読書サービス

この本は、読み終えた瞬間に何かが完結するというより、あとから静かに効いてくるタイプの一冊だったように感じました。

ページを閉じたあとも、ふとした瞬間に言葉や場面を思い出して、「もう一度考えてみたい」と思わせる余韻が残ります。

もし、そうした感覚をもう少し大切にしたいなら、文字とは違うかたちで触れ直すのも一つの方法です。

Audibleは、オーディオブックやポッドキャストを含む数十万作品が聴き放題で、30日間の無料体験があり、月額1,500円でいつでも退会できます。

移動中や家事の合間など、日常の中で考え続ける時間をつくりたい人には、無理のない選択肢だと思いました。

一方で、「まず全体像を整理してから向き合いたい」「もう少し軽い入口がほしい」と感じることもあります。

flierは、1冊約10分で読める要約が用意されていて、毎日1冊ずつ追加されます。

ビジネスや教養を中心に4,200冊以上(ゴールドプラン)が揃っており、音声要約にも対応しているので、通勤中や眠る前の時間にも取り入れやすいです。

全体像をつかむための入口としては flier。

一冊の内容を、時間をかけて味わい直すなら Audible。

その時の気分や読み方に合わせて選ぶのが、いちばん自然だと感じました。

コメント