
この本のタイトルを見た瞬間、胸の奥がひゅっと縮む感じがしました。 「二人一組になってください」って、学校ではよくある言葉なのに、言われた側にとっては地獄みたいに怖い時があるんですよね。 私は学生時代、ペアや班決めのたびに“自分が余るかもしれない”という緊張で、妙に息が浅くなってしまうタイプでした。だからこそこの本は、読む前から嫌な予感がして、でもそのぶん避けられなくて。 ページを開いたら最後、軽い気持ちでは戻れない。そういう作品だと感じました。
【書誌情報】
| タイトル | 二人一組になってください |
|---|---|
| 著者 | 木爾チレン【著】 |
| 出版社 | 双葉社 |
| 発売日 | 2024/09 |
| ジャンル | ミステリー |
| ISBN | 9784575247688 |
| 価格 | ¥1,815 |
卒業式直前に始まったデスゲーム(特別授業)あなたに本当の友達はいる?誰かと手を繋がないと死ぬ――。女子高のクラス内カーストが崩壊し、裏切り、嫉妬、憧れ、真実が手を取り合う。『みんな蛍を殺したかった』の著者が青春と友情の極致を描く最高傑作!【ルール】・二人一組になってください。・誰とも組むことができなかった者は、失格になります。その回の失格者が確定したら、次の回へと続きます。・一度組んだ相手と、再び組むことはできません。 ・残り人数が偶数になった場合、一人が待機となります。・特定の生徒が余った場合は、特定の生徒以外全員が失格になります。・最後まで残った二人、及び一人の者が、卒業式に出席できます。・授業時間は60分です。《あらすじ》「このクラスには『いじめ』がありました。それは赦されるべきことではないし、いじめをした人間は死刑になるべきです」とある女子高の卒業式直前、担任教師による【特別授業(ゲーム)】が始まった。突如開始されたデスゲームに27人全員が半信半疑だったが、余った生徒は左胸のコサージュの仕掛けにより無惨な死を遂げる。自分が生き残るべき存在だと疑わない一軍、虚実の友情が入り混じる二軍、教室の最下層に生息し発言権のない三軍――。本当の友情とは? 無自覚の罪によるいじめとは何か? 生き残って卒業できるのは果たして誰か?
本の概要(事実の説明)
ジャンルとしてはデスゲーム小説ですが、読後に残るのは「死の恐怖」よりも、もっと現実に近い、いじめや孤立の空気です。 舞台は京都の女子高。卒業式を目前にした教室で、「特別授業」として突然始まるデスゲーム。 ルールは残酷で単純です。二人一組になれなければ“失格”になり、失格者は死んでいく。そしてもう一つ厄介なのが、同じ相手と二度手をつないではいけない、という条件です。 つまり、このゲームは運や腕力ではなく、クラス内の関係性そのものを道具にして突きつけてくる。 スクールカーストが崩れるどころか、極限状態でもしぶとく残ってしまうのが、怖いほどリアルでした。 向いているのは、人間関係の表と裏、集団の空気の残酷さを描く作品が好きな人。 逆に、爽快感やカタルシスを求めると苦しくなるかもしれません。
印象に残った部分・面白かった点
まず印象に残ったのは、冒頭のカースト表です。あれがあるだけで、物語が“ただのフィクション”じゃなくなる。誰が上で、誰が下で、誰が「余り枠」なのかが、最初から可視化されてしまうんですよね。 読んでいて一番つらいのは、いじめている側だけじゃなく、見て見ぬふりをしている側の生々しさでした。「悪意がない」って言い訳が、ここでは一番鋭い刃になる。 そして登場人物が多いのに、それぞれの関係性や、嫉妬や憎しみの向きが微妙に違う。 仲良しグループの中にすら、優劣や支配、取り残される恐怖が息をしていて、「女子ってこういうのあるよね」と片付けるには痛すぎるリアルさがありました。 何より、死に直面したときに出てくる“本音”のえげつなさ。 友達だと思っていた相手が、実は自分を見下していたとか、都合よく扱っていただけだったとか。そういうのが、じわじわ刺さってきました。
本をどう解釈したか
この物語が投げかけてくる問いは、すごく単純に見えて、本当は答えが出ないものだと思います。 いじめた人は裁かれるべき。 でも、「見て見ぬふりをした人」も同罪なのか。 そもそも、いじめってどこからがいじめなのか。 本人に自覚がない“空気”は罪になるのか。 私は読みながらずっと、「誰かの側にいることで、自分の安全を確保してきた瞬間」って、誰にでもあるんじゃないかと思ってしまいました。 クラス内で、孤立した子を助ける勇気がなくて、笑って流してしまったこと。 それは悪意じゃなくても、結果的に悪になることがある。 この本は、その“無自覚の悪意”を真正面から炙り出して、読者に逃げ道をくれない作品だと感じました。
読後に考えたこと・自分への影響
読後に残ったのは、「いじめの加害者を罰する話」ではありませんでした。 もっと怖いのは、罰しても、終わらないことです。 結局、誰かが死んでも、誰かが裁かれても、クラスの空気は簡単に浄化されない。 むしろ「正義」の形を借りて、また新しい残酷さが生まれてしまう。 ラストの展開は特に、その救いのなさが強烈で、私はしばらく何も考えられませんでした。 そして、タイトルがここまで強い意味を持つとは思いませんでした。 学校で当たり前に言われる一言が、誰かにとっては処刑宣告になっている。 その事実を、ちゃんと大人側が想像できているのか――読み終えた後、そんなことを考えました。
この本が合う人・おすすめの読書シーン
この本は、明るい場所で軽く読むより、夜に一人で読むのが合う気がします。 部屋の照明を少し落として、静かにページをめくっていると、教室のざわめきや、張りつくような空気が肌にまとわりつくみたいに感じられます。 読みながら何度も、「これはフィクションなのに、思い出したくない現実が混ざってくる」と思いました。 学校という閉じた世界を経験したことがある人ほど、きっと心がざらつきます。 だからこそ、読み終わったあとに、自分の過去の教室を思い返してしまう時間ごと、読書体験になる作品です。
『二人一組になってください』(木爾チレン・著)レビューまとめ
派手なデスゲームの形をしているのに、核心はとても現実的でした。
人間関係の残酷さ、孤立の恐怖、無自覚の悪意。
そして「一人になりたくない」って気持ちが、人をどこまで壊すのか。
読みやすくて一気読みできるのに、読後は軽くない。
私はこの本を、“教室の空気を忘れたふりをしてきた人”ほど刺さる物語だと思いました。
読後の余韻を深めるための読書サービス
この本は、読み終えた瞬間に何かが完結するというより、あとから静かに効いてくるタイプの一冊だったように感じました。
ページを閉じたあとも、ふとした瞬間に言葉や場面を思い出して、「もう一度考えてみたい」と思わせる余韻が残ります。
もし、そうした感覚をもう少し大切にしたいなら、文字とは違うかたちで触れ直すのも一つの方法です。
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移動中や家事の合間など、日常の中で考え続ける時間をつくりたい人には、無理のない選択肢だと思いました。


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