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『さくらのまち』(三秋縋・著)レビュー|人を信じることは救いになるのか?

小説・文学

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タイトルと装画から、どこかノスタルジックな青春小説を想像して手に取りました。 けれど読み始めてすぐ、この物語には終始「死の気配」がまとわりついていると感じました。 読み進めるほどに、人を信じたい気持ちと疑ってしまう恐怖の間で、心が落ち着かなくなっていきました。

【書誌情報】

タイトルさくらのまち
出版社実業之日本社
発売日2024/09
ジャンルその他
ISBN9784408538662
価格¥1,980
出版社の内容紹介

二度と戻らないつもりでいた桜の町に彼を引き戻したのは、一本の電話だった。
「高砂澄香が自殺しました」

澄香――それは彼の青春を彩る少女の名で、彼の心を欺いた少女の名で、彼の故郷を桜の町に変えてしまった少女の名だ。
澄香の死を確かめるべく桜の町に舞い戻った彼は、かつての澄香と瓜二つの分身と出会う。
あの頃と同じことが繰り返されようとしている、と彼は思う。
ただしあの頃と異なるのは、彼が欺く側で、彼女が欺かれる側だということだ。

人の「本当」が見えなくなった現代の、痛く、悲しい罪を描く、圧巻の青春ミステリー!

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本の概要(事実の説明)

本作は近未来を舞台にしたSF小説でありながら、描かれているのは極めて人間的な感情です。 自殺ハイリスク者を検知する「手錠」と呼ばれるデバイスと、当事者に寄り添うため密かに配置される「プロンプター(通称サクラ)」という制度が存在する社会。 主人公・尾上は、マッチングアプリのサクラとして働く青年です。 そんな彼のもとに届いたのは、中学時代に想いを寄せていた少女・澄香の訃報でした。 彼女はなぜ死んだのか。故郷「さくらのまち」に戻った尾上は、過去の記憶と現在の歪んだ人間関係を辿りながら、その真相に近づいていきます。 人と関わることに臆病になっている人、善意を素直に受け取れなくなっている人に向いている作品だと思いました。

印象に残った部分・面白かった点

強く印象に残ったのは、「助けるための制度」がかえって人間不信を生み出してしまう皮肉です。 誰かが優しくしてくれるたびに、それが本心なのか、役割なのかを疑ってしまう世界は、息苦しく感じました。 「サクラ」という言葉が持つ軽さと、その裏にある重い罪が、物語全体を冷たく覆っているようでした。

本をどう解釈したか

この作品が投げかけている問いは、「信じることは、本当に善なのか」という点だと感じました。 守るために設計された仕組みが、人の心から無条件の信頼を奪っていく。 作者は、他者との関係性が制度や管理によって歪められる現代社会そのものを、少し先の未来として描いているように思えました。

読後に考えたこと・自分への影響

読み終えて残ったのは、救いのなさと同時に、強烈な問いでした。 人を信じることは、傷つくリスクを引き受けることでもあります。 それでも信じる勇気を持てるかどうかが、生きることそのものと深く結びついているのだと感じました。

この本が合う人・おすすめの読書シーン

感情が静かに沈んでいる夜、一人きりの時間に読むのが合う作品です。 軽い気持ちではなく、自分の内側と向き合える余裕のあるタイミングで手に取ることをおすすめします。

『さくらのまち』(三秋縋・著)レビューまとめ

救いはほとんど描かれません。

けれど、信じることの痛みと、それでも人を求めてしまう弱さを、これほど誠実に描いた物語は多くないと感じました。

読後に残る重さこそが、この作品の核心なのだと思います。

読後の余韻を深めるための読書サービス

この本は、読み終えた瞬間に何かが完結するというより、あとから静かに効いてくるタイプの一冊だったように感じました。

ページを閉じたあとも、ふとした瞬間に言葉や場面を思い出して、「もう一度考えてみたい」と思わせる余韻が残ります。

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