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『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む』(かまど/みくのしん・著)レビュー|読書に正解はあるのか?

エッセイ・ノンフィクション

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タイトルを見たとき、正直に言うと少し身構えました。「本を読んだことがない」という言葉に、どこか企画的な匂いを感じたからです。 ところが読み始めると、その警戒心はすぐに崩れました。みくのしんさんの読書は、ぎこちなくて、騒がしくて、でも驚くほど真剣だったからです。一文ごとに立ち止まり、笑い、困惑し、ときに涙ぐむ姿を追ううちに、私自身の読書体験まで揺さぶられていくのを感じました。

【書誌情報】

タイトル本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む~走れメロス・一房の葡萄・杜子春・本棚
著者かまど/みくのしん
出版社大和書房
発売日2024/08
ジャンル文芸(一般文芸)
ISBN9784479394358
価格¥1,760
出版社の内容紹介

【100万人が沸いたスゴい読書!!!!】名作3作+『変な家』大ヒット・雨穴「本棚」特別寄稿!SNSで話題沸騰の「オモコロ」大人気シリーズを書籍化!「読書の常識が変わる……。これは全く新しい本の読み方です」――雨穴氏「ついに日本一おもしろく『走れメロス』を読む人間が現れた」――ダ・ヴィンチ・恐山氏「生まれて一度も読書をしたことがない男が本を読んだら、一体どうなるんだろう」そんな素朴な疑問がきっかけで生まれた「本を読んだことがない32歳が初めて『走れメロス』を読む日」というオモコロ記事。1人の男が人生で初めて本を読む。ただそれだけの記事が爆発的に拡散され、100万人の目に留まる大ヒット記事に……!この本でしか味わえない、不思議な読書体験をぜひお楽しみください!

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本の概要(事実の説明)

本書は、32歳になるまでほとんど本を読んだことがなかったみくのしんさんが、友人であるかまどさんの伴走のもと、名作文学を初めて読む様子を記録した読書エッセイです。 扱われるのは「走れメロス」「一房の葡萄」「杜子春」など、誰もが一度は耳にしたことのある作品たち。物語のあらすじをなぞるのではなく、「読めない」「わからない」「でも感じる」という正直な反応が、そのまま言葉にされています。 読書が苦手な人はもちろん、長く本を読んできた人にも向いている一冊だと感じました。

印象に残った部分・面白かった点

印象的だったのは、みくのしんさんが一文一文に過剰なほど反応するところです。情景を映像化できないと立ち止まり、言葉の意味が腑に落ちるまで声に出して読み直す。その姿は少し滑稽にも見えますが、だからこそ物語への没入度が異常なほど高いように思えました。 「腕に唸りをつけて」といった表現に全力で戸惑う場面では笑ってしまいましたが、その真剣さがあるからこそ、終盤で感情が大きく動く理由も納得できました。

本をどう解釈したか

この本が投げかけている問いは、とてもシンプルです。「本は、どう読まなければならないのか」。 作者たちは、その問いに明確な答えを与えません。ただ、みくのしんさんの読書体験を通して、「正解を探す読み方」そのものが、読書の楽しさを奪っている可能性を静かに示しているように感じました。 かまどさんの「どう読むかは人それぞれでいい」という姿勢も、読書を評価や競争から解放してくれます。

読後に考えたこと・自分への影響

読み終えて強く残ったのは、「読める/読めない」ではなく、「感じたかどうか」が読書の本質なのではないか、という考えでした。 私はこれまで、無意識に効率よく読もうとしていたのだと思います。この本を通して、立ち止まってもいいし、わからなくてもいいと、自分に許可を出せたように感じました。

この本が合う人・おすすめの読書シーン

時間に追われない休日、静かな部屋でページをめくるのがおすすめです。 誰かと一緒に本を読んでいるような感覚になるので、少し疲れているときや、読書に自信をなくしているときにも、そっと寄り添ってくれる一冊だと思います。

『本を読んだことがない32歳がはじめて本を読む』(かまど/みくのしん・著)レビューまとめ

本書は、読書の技術ではなく、読書の喜びを思い出させてくれる作品でした。

上手に読めなくてもいい。ただ、向き合った時間そのものが、確かな読書体験になる――そう感じさせてくれる、やさしくて力強い一冊です。

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