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『傲慢と善良』(辻村深月・著)レビュー|結婚は誰のためなのか?

小説・文学

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この本は、いきなり「婚約者の失踪」から始まります。ミステリーみたいにページをめくってしまうのに、読み進めるほどに胸が苦しくなって、何度も手が止まりました。 たぶん理由は簡単で、出てくる感情がどれも「他人事じゃない」からだと思います。恋愛や結婚って、きれいな気持ちだけでは進まない。自分の中の小さな傲慢や、手放したくない善良さが、どちらも顔を出してくる。 私は読んでいる途中から、登場人物を責める気持ちと、分かってしまう気持ちが同時に湧いて、落ち着かないまま最後まで連れていかれました。

【書誌情報】

タイトル朝日文庫 傲慢と善良
著者辻村深月【著者】
出版社朝日新聞出版
発売日2022/09
ジャンル文芸(一般文芸)
ISBN9784022650597
価格¥850
出版社の内容紹介

婚約者・坂庭真実が姿を消した。その居場所を探すため、西澤架は、彼女の「過去」と向き合うことになる。「恋愛だけでなく生きていくうえでのあらゆる悩みに答えてくれる物語」と読者から圧倒的な支持を得た作品が遂に文庫化。《解説・朝井リョウ》

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本の概要(事実の説明)

ジャンルは「婚活×ミステリー」の形を取りつつ、読み終えると強いヒューマンドラマとして残る作品だと感じました。 テーマは、結婚という制度やイベントそのものというより、「自分の人生をどう選ぶのか」「相手をどう見てしまうのか」という心の癖に踏み込んでいきます。 著者は辻村深月さん。とにかく心理描写が細かくて、優しい言葉のはずなのに刺さってくる瞬間があります。 あらすじは、婚活で出会い婚約した相手が突然消えてしまい、残された側が真相を追うところから始まります。追いかけるうちに、消えた側の背景、人間関係、育ってきた環境が見えてきて、物語の意味が少しずつ変わっていきます。 向いている読者は、婚活中の人だけではないと思います。恋愛や結婚で「点数化してしまったことがある人」、いい人でいようとして苦しくなったことがある人、家族との距離感に悩んだことがある人にも刺さるはずです。

印象に残った部分・面白かった点

印象に残ったのは、「傲慢」と「善良」が対立ではなく、隣り合わせで出てくるところでした。 たとえば「私なんて…」という言い方が、謙虚に見えて実は傲慢でもある、という指摘に、私は思わず息が詰まりました。自分を低く見積もっているようでいて、どこかで「本当はもっと評価されるべき」と思ってしまう、あの感覚を見抜かれた気がしたからです。 また、婚活の場面で無意識に相手を点数化してしまう心理が、嫌になるほどリアルでした。自分はそんなつもりがないのに、条件や世間体、安心感を材料にして「この人は何点」と心のどこかで測ってしまう。 そして女性側の背景として描かれる、母親の過干渉や共依存、地方の閉塞感も重く残りました。誰かが悪いという単純な話ではなくて、環境と習慣が人を縛っていく感じが怖かったです。

本をどう解釈したか

この作品が投げかけてくる問いは、「結婚は誰のためのものなのか」だと思います。 本人の意思で選んだつもりでも、親の期待、周囲の目、世間の正解に寄せていくうちに、自分の本音が分からなくなる。 そして厄介なのは、その状態が「善良」に見えてしまうことです。空気を読める、親を安心させる、迷惑をかけない。全部、いいことのはずなのに、積み重なるほどに自分の人生が薄くなっていく。 一方で、相手を評価してしまう側の「傲慢」も、悪意からではなく、怖さから来ているように感じました。失敗したくない、傷つきたくない、だから条件を固めたくなる。 どちらの側にも「分かる」があるから、読み手は簡単に正義の位置に立てない。その不安定さが、この本の強さだと思います。

読後に考えたこと・自分への影響

読後に残ったのは、「欲しいものがちゃんと分かっている人は強い」という言葉でした。 生活をどうしたいか、何を大事にしたいか、どんな時間を増やしたいか。そういうビジョンがないままだと、選択の基準が外側に寄っていって、いつの間にか「誰かの正解」を生きてしまう。 私は、目標がなくて漠然と楽しくない時期がある、という感想がすごく腑に落ちました。結婚の話なのに、人生の話として刺さるのはそこだと思います。 善良でいようとするだけでは、きっと苦しい。傲慢を捨てるだけでも、たぶん息が詰まる。まずは自分の中にある両方に気づくことが、最初の一歩なのかもしれないと感じました。

この本が合う人・おすすめの読書シーン

一気読みできる勢いはあるのに、心がざわつく場面が多いので、私は夜にじっくり読むのが合うと思いました。 部屋が静かで、スマホを置ける時間。読んだあとにすぐ寝るより、少しぼんやり考える余白がある夜のほうが、この本の余韻を受け止めやすい気がします。 自分の恋愛や家族のことを思い出して、気恥ずかしくなったり、いたたまれなくなったりするかもしれません。そういう揺れを許せるタイミングに読むのがよさそうです。

『傲慢と善良』(辻村深月・著)レビューまとめ

婚活ミステリーの形を借りながら、結婚と人生の「選び方」を真正面から突きつけてくる作品でした。

傲慢と善良は、どちらかを断罪して終わるものではなく、誰の中にも同居しているもの。

読み終えてからも、自分の中の言い訳や願いが、しばらく静かに残り続ける本だと感じました。

読後の余韻を深めるための読書サービス

この本は、読み終えた瞬間に何かが完結するというより、あとから静かに効いてくるタイプの一冊だったように感じました。

ページを閉じたあとも、ふとした瞬間に言葉や場面を思い出して、「もう一度考えてみたい」と思わせる余韻が残ります。

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