随分と会っていない自分の親が年老いていくのを、テレビ電話で話した後、自分がどういう老後生活をおくるのかと、しんみりと考える時があります。
そうやって、考えた後、自分が年老いた時は、自分が大切に思う、心から安心出来る人と一緒にいたい、と強く思いました。
「家族」って、色々な形があって、人それぞれの「家族」の言葉の背景には様々な感情があるもの。
それを、「しまう」ってどういう事なんだろう…?
題名に惹かれ、この本『家族じまい』を読んでみました。
始末する、終わる、片付ける…物みたいに簡単に「しまえない」からこそのお話。
結果、「家族」とは⁉︎を考えさせられた作品でした。
『家族じまい』のあらすじ
北の国、北海道の家族の物語。
親の老い、夫婦間のズレ、親子の確執などをテーマに各章ごとに主人公がかわる。
「ママがね、ボケちゃったみたいなんだよ。」
突然かかってきた、妹からの電話。
両親の老いに直面して戸惑う姉妹と、それぞれの家族。
認知症の母と、かつて横暴だった父…別れの手前にある、かすかな光を描く長編小説。
『家族じまい』を読んで
認知症を患った女性を起点に描かれており、リアリティがあるだけに、心に重くのしかかる作品です。
親と子供、同じ時間を過ごしてきたはずなのに、記憶はそれぞれ違っている…。
我が子を愛し、大切だと思って育てているつもりでも、子供からすれば、迷惑な事として記憶している場合があるもの。
親子の関係が上手くいってなくても、老後は平等にやってきて、お互い、向き合わなくてはならない時がやってくるのですね。
絵に描いたような、家族愛は、そうそうあるものでもないのかもしれないですね…。
それでも、こういう『家族じまい』に登場する「家族」は少なくないと思うし、家族って、みっともないと思う部分も多々あると言えるけど、きっと希望もあるものだと思います。
最後まで記憶を持ったまま生き抜く人の辛さも思うけれど、認知症を患った人にとって、幼い日々の幸せな記憶があるのなら、それはそれで、幸せかもしれないと思えました。
無感動という武器があれば過剰に傷つくこともない
『家族じまい』 桜木紫乃 集英社
正論はできるだけ尊敬にまぶして放たなければいけない
『家族じまい』 桜木紫乃 集英社
会話の最後はいつの時も、明るい明日の話題がいい
『家族じまい』 桜木紫乃 集英社
頭がしっかりしているのは、いたいもかゆいも最期までぜんぶ覚えておけっていう何かのバツかもよ
『家族じまい』 桜木紫乃 集英社
言葉のチョイスが良く、印象に残ります。
読み進めるほどに、タイトル『家族じまい』の意味が心に重くのしかかってきて、誰にでも起き得ることだけに、色々考えさせられました。章のつながりも絶妙でどんどん引き込まれて、スラスラと読めました。
『家族じまい』を読んでみたいなと思って頂けたら、ぜひ手に取ってみてくださいね。
最後までお読みくださり、有難うございます。
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