元同僚や上司から 「リファレンスチェックをお願いしたい」 と連絡が来た瞬間、ほとんどの人は少なからず身構えます。
「何を聞かれるんだろう?」
「間違ったことを言って候補者の足を引っ張ったらどうしよう……」
「そもそも断ってもいいの?」
リファレンスチェックは転職候補者の “実像” を知るためのプロセスです。
採用企業はこの情報を基に内定可否や配属先を決定するため、推薦者の回答はとても重要。
しかし、正しい対応を知っていれば大げさに構える必要はありません。
むしろ 「候補者の魅力を第三者視点で伝え、企業と候補者のマッチングを後押しできるチャンス」 と捉えられます。
本記事では、リファレンスチェックを依頼された際の判断基準・回答方法・断り方・フォローアップまで、実務で役立つ情報を網羅しました。
リファレンスチェックを依頼されたら「前向き+冷静に対応」を基本に
突然の依頼に戸惑うかもしれませんが、まずは「推薦者として信頼された」ことをポジティブに捉えましょう。
候補者があなたを選んだということは、それだけあなたの意見が価値あるものだと考えているからです。
ただし、勢いで「いいよ」と引き受けるのではなく、まずは冷静に状況を確認しましょう。
- どこの企業からの依頼か?
- 回答は電話か書面か?
- 回答にかかる時間の目安は?
これらを把握した上で、自分が対応可能かどうかを判断します。
特に業務が立て込んでいたり、候補者とあまり関わりがなかった場合は、無理に引き受ける必要はありません。
- 依頼の経路を確認する
- 候補者本人からダイレクトメッセージ
- 採用企業 or 代行サービスから公式メール
- 転職エージェント経由の依頼
依頼文のテンプレ(氏名・企業名・締切・回答方法)がそろっているかをチェック。
- “信頼して任された”ことをまず肯定的に受け止める
候補者は複数の関係者の中から 「公平に自分を評価してくれる人」 を選出しています。推薦依頼はその証拠。 - 対応可否を48時間以内に返答
ビジネスメールの基本同様、長くても2営業日以内に「承諾 or 辞退」を返信しましょう。迅速さは候補者の安心材料です。
例:承諾返信テンプレ(メール)
〇〇様
お世話になっております。△△株式会社の♢♢です。
このたびは□□様のリファレンスチェックについてご連絡いただき、ありがとうございます。
喜んで協力させていただきます。
回答方法など詳細をご共有いただけますと幸いです。
何卒よろしくお願いいたします。
引き受けるかは自由!「忙しい」「関係不明」なら断ってOK
リファレンスチェックは義務ではありません。
候補者や企業に気を使いすぎて “無理な承諾” をすると、あとで双方に迷惑がかかることも。
例えば以下のようなケースでは、丁寧に断るのが適切です。
断ったほうが良い典型例 | 理由 |
当時の仕事内容をほぼ覚えていない | あいまい回答=信頼性低下 |
候補者と半年未満しか同席していない | 観察期間が短く客観性に欠ける |
評価が極端にネガティブ | 個人の主観で悪印象を与える恐れ |
社内規定で前職情報を外部共有できない | 情報漏えい・コンプラ違反リスク |
業務が逼迫し対応時間を確保できない | 締切遅延 → 候補者の選考に影響 |
断る際は、「申し訳ないけれど今回はお引き受けできません」といった一文で十分です。
長々と理由を説明する必要はなく、「多忙につき対応が難しい」といった伝え方で問題ありません。
リファレンスチェックを引き受ける場合のポイントは?
引き受けた場合、いくつかのポイントを押さえておくと安心です。
- 正直な事実を伝えること
- プライバシーや個人情報に配慮
- 答えに迷ったら確認する
正直な事実を伝えること
採用企業は、候補者の働き方や人柄についてリアルな情報を求めています。
過度に美化したり、逆に必要以上に否定的に話すのではなく、「事実に基づいて客観的に」伝えることが最も大切です。
プライバシーや個人情報に配慮
質問の中には、候補者の家庭環境、宗教、病歴などセンシティブな内容が含まれることも稀にあります。
これらについては「答えられません」とハッキリ伝えて構いません。
法律上も不適切な質問に答える義務はありません。
答えに迷ったら確認する
内容に迷いがある場合は、候補者本人に「どの職務について答えてほしいか」などを事前に確認してもよいでしょう。
事実+具体例+客観的評価の三段構成で回答
- 事実:担当プロジェクト、役職、期間
- 具体例:成果 KPI、チーム貢献エピソード、リーダーシップ発揮場面
- 客観的評価:上位何%の成果、上司や顧客の評価コメント
「在籍2年間、営業チーム10名中常に上位3位以内の売上を維持。新規開拓率はチーム平均の 150% でした。」
「がんばっていました。優秀だと思います。」(抽象的で説得力ゼロ)
ネガティブ面も“改善プロセス”込みで説明
×「納期遅れが目立った」→ ◯「最初は納期に課題があったが、ガントチャート管理を学び3ヶ月で遅延をゼロに改善」
守秘義務・個人情報は厳守
- 年収・評価点・健康状態などは答えない
- 家族構成・宗教・出身大学の偏差値などは違法または不適切質問
リファレンスチェック「どんな質問が想定される?」
実際に聞かれる質問の多くは、候補者の仕事ぶりや職場での振る舞いに関するものです。以下のような項目が代表的です。
- 勤務期間や職務内容、役職などの基本情報
- 担当していた業務に対する成果・評価
- チームでの協調性やリーダーシップ
- コミュニケーション能力
- トラブル時の対応力
- 遅刻・早退・欠勤など勤怠面の安定性
- 強みや課題、印象に残っているエピソード
- 最後に「この人を採用しますか?」といった総合的な意見
採用企業によって質問項目は異なるものの、「業務・人間関係・信頼性」に関するポイントが共通して尋ねられる傾向にあります。
カテゴリ | 質問 | 回答ヒント |
基本情報 | 在籍期間と役職? | 正確に答える |
職務実績 | 目標の達成度は? | KPIと前年比で回答 |
スキル | 強み・弱みは? | 強み→事例/弱み→改善 |
コミュ力 | チームでの役割は? | 調整役・支援役など |
リーダーシップ | 部下評価は? | 1on1や育成例を交えて |
勤怠 | 遅刻・欠勤は? | 回数など事実で回答 |
再雇用意向 | また働きたい? | Yesなら理由も添えて |
正しく断る場合のマナー
断る際には、感情的にならずに淡々と伝えるのがポイントです。以下のような簡潔な一文で十分です:
- 「現在業務が多忙で対応が難しいため、申し訳ありませんが辞退させていただきます」
- 「候補者との関係が浅く、適切な情報提供が難しいと判断しました」
無理に言い訳を重ねたり、相手に負い目を与えるような断り方は避けましょう。誠意ある対応であれば、候補者側も納得してくれます。
- “迅速・簡潔・ポジティブ” が鉄則
- 代替候補を紹介できる場合は提案すると親切(例:「同部署の◎◎課長のほうが詳細を把握しております」)
- 断った後は候補者へも「協力できなくてごめんね」と一報しておくとトラブル回避になります。
リファレンスチェック「回答し終えたら、お礼と報告を」
対応後は、候補者に「完了しました」と一言伝えておくのが丁寧です。
これにより候補者も安心できますし、転職活動中の不安を少しでも減らすことができます。
- 「本日、リファレンス回答を提出しました。お役に立てれば嬉しいです。」
- 「今後のご活躍を応援しています!」
このような一言があるだけで、あなたの誠実さが相手に伝わり、信頼関係の継続にもつながります。
- メールは控えとして保存し、いつでも説明できるようにしておく。
- 企業担当者の名刺や連絡先を保管し、後日の問い合わせに備える。
まとめ:対応は「誠実+具体的+簡潔」。あなたの言葉が“後押し”になる
リファレンスチェックを頼まれたときは、まず冷静に状況を把握し、自分が引き受けるべきかを判断しましょう。
引き受けるなら、事実に基づき誠実かつ具体的に回答することが重要です。
一方で、対応が難しい場合は断っても問題ありません。
むしろ適切な判断をすることが、候補者や企業への誠実な対応につながります。
あなたの一言が、候補者の転職の“後押し”になることも。
気負わず、けれど丁寧に向き合うことが何より大切です。
- 引き受ける/断るを迅速判断
- 引き受けたら事実+具体例+客観評価を意識
- 守秘義務・個人情報は厳守
- ネガティブ情報は改善プロセス込みで述べる
- 完了後は候補者へ感謝と報告
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